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ご自身が、がんになったら

孤独を紛らわすには医療者を交えた患者グループで話し合うことが有効です

Q:

孤独をやわらげるためにどのようなことが有効でしょうか?

がん患者さんの多くが孤立感にさいなまれます。こんなときは、同じ病気、同じ境遇の患者さんたちと語りあうことが大きな支えになります。語らいのコミュニティーが病気そのものに良い効果をもたらすことがわかってきました。ここで大切なことは患者さんだけに限定せず、医療の専門家を参加させることです。

保坂隆先生

答えてくださる方

保坂 隆先生
東海大学
医学部教授(精神医学)

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ソーシャルサポートは予後を改善する

これからは、がんだけではなくすべての医療において、ソーシャルサポートがキーワードになってくると思います。

ソーシャルサポートとは、その人の周囲で、その人を守ってくれるような人たちのことをいいます。理想的には、配偶者、家族、親子、近所の人、同僚、友人などの中で、自分を一番サポートしてくれる人たち、ということになります。また、いわゆる患者会も、その1つだといえます。

患者さんにとっては、そのようなソーシャルサポートの人たちがいない場合よりも、いる方が、はるかに病気の経過が良いのです。また、その人数が多ければ多いほどが良い、といわれています。例えば、配偶者がいない独身のがん患者さんは、配偶者のいる患者さんよりも生存期間が短い、という論文があります。(Goodwin JS, et al.:JAMA, 258,3125-30,1987)また、乳がんの患者さんで家族・医師・友人に相談できる人は病気の経過が良い、という論文もあります。(Maunsell E, et al.:Cancer ,76,631-7,1995)

したがって、今後のがんの医療を考えるとき、自分を支えてくれる人がどれくらいいるかということは、十分に考えていただきたいテーマです。もちろん、それは、がんだけではなく、例えばリウマチ、パーキンソン病などでも同じことで、すべての医療においてソーシャルサポートがキーワードになってくるだろう、と思っています。

6週間6回のグループ療法で効果

私が米国に留学した時期である1989年~90年ころ、そこではグループ療法について2つの大きな研究が行われていました。

その1つは、スタンフォード大学のスピーゲル(Spiegel)らの研究です。これは、遠隔転移した乳がん患者さんを2つの集団に分けたうえで、両方に対して医学的治療を行うとともに、一方の集団には週1回集まってもらい、グループ療法を行ったのです。このグループ療法は、患者さん数名に精神科医とソーシャルワーカー各1名が同席し、それぞれが悩んでいること、困っていることなどを自由に話し合ってもらうというものです。これを1年間で50セッション(回)行いました。こうして、その2つの集団の生存率などを比較したところ、グループ療法を行った集団では生存期間が約2倍に延長することがわかりました。(Spiegel D, et al.:Lancet,ii,888-891,1989)(その後、スピーゲルらの研究に対して追試験が行われ、否定的な結果も出ています。また、その研究の結果について再解釈なども行われています。)

もう1つの大きな研究は、UCLAのファウジー(Fawzy)らによるものです。これは、初期の悪性黒色腫(メラノーマ)の患者さんを2つの集団に分けたうえで、片方の集団には通常の外科治療、もう一方の集団にはその外科治療にプラスして6週間で6回だけグループ療法に参加することを求めました。このグループ療法は、決められたテーマの話を聞いたり、リラクセーションの方法を学んだりするものです。その結果、グループ療法を行った集団の方が生存期間は延長し、再発率は低いことがわかりました。つまり、スピーゲルの研究のようにグループ療法を1年間にわたり50回もしなくても、6週間6回で効果があることがわかったのです。

グループ療法により情緒状態が非常に改善

その後、帰国した私は、初発の初期乳がんの患者さんを対象に、精神科的なサポート(介入)の研究を行いました。方法は、初期乳がん患者さん3~10名に対して精神科医1名と看護師1名が加わり、週1回1時間のグループ療法を5回、または週1回90分のグループ療法を5回、連続して行い、その前後での状態を比較する、というものです。毎回のセッション(グループ療法)では、教育的介入、問題解決技法、リラクセーション、イメージ療法などについて説明、実施しました。

教育的なサポート(介入)として、がんとストレスの関係、情緒状態とがんの進行や免疫機能の関係などについて説明しました。問題解決技法としては、日常的な問題点や困難に対して現実的・具体的な解決方法を説明しました。支持的精神療法として、受容・励まし・保証などにより情緒状態の改善を図りました。リラクセーションとして、漸進性筋弛緩法、自律訓練法などを行いました。また、イメージ療法として、リラックスした状態でリンパ球やがん細胞をイメージし、がん細胞が退縮したり死滅する場面をイメージしてもらいました。

以上の一連の精神科的サポート(介入)により、情緒状態が非常に改善されました。同じようながんになった人たちがいて、同じような不安をみんな抱えているのだ、と知ることができます。みんなと深い話をすることで、互いに「これからスクラムを組んで頑張っていきましょう」と言える仲間ができ、安心感のようなものも得られます。半年後にアンケート調査を行ったところ、驚いたことに、グループ療法の参加者の2/3は、その後も互いに連絡を取り合っていることがわかりました。例えば、あるグループは「虹の会」という名前を付け、月に1回食事会をする、ハイキングに行くといった形で、患者会のようなものに発展していきました。

このように参加者同士で互いに連絡を取り合ったりしていることが、まさに、ソーシャルサポートなのです。また、その5回のセッション/グループ療法は、ソーシャルサポートを提供する場としての意義があるのです。

すべての病院が、たった5回だけグループ療法を行ってあげると、その後、自発的にみなさんが助け合うソーシャルサポートあるいは、ソーシャルネットワークが自然にできるのです。また、その結果として、前述の研究結果のように、がんの経過に良い影響を与えることになると考えます。

ファシリテーターやカウンセラーを養成

そのグループ療法では、医療職の2人が司会者となり、患者さんの話を聞き出したりしました。医療職に限らず、その司会・進行ができる人材を養成しないと、グループ療法が普及しません。そこで、私が研究代表者を務めている厚生労働科学研究費補助金がん臨床研究事業「がん患者や家族が必要とする社会的サポートやグループカウンセリングの有用性に関する研究」では、その司会を担当するなど、グループ療法を促進する役割を果たす「ファシリテーター」(進行・調整役)の養成講座を2007-2009年度において開催しています。

また、先輩の患者さんが後輩の患者さんに対してカウンセリングを行うといったようなピア(同僚)カウンセリングが、いろいろな団体で実施されています。しかし、そのピアカウンセリングは標準化されていません。そこで、前述の研究事業において「がん患者・家族、医療者のためのがんカウンセラー養成講座」も開始しました。

なお、そのグループ療法に対比する用語として、セルフヘルプグループ(自助グループ)があります。これは医療の専門職が入っていないグループであり、患者会などがそれに相当します。そのほか、「サロン」のような集まりもあります。ただし、それらのグループ、集まりについて、患者さんがどう変わったかという科学的なデータはまだありません。

 
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Last Updated: 2018/8/03L.JP.OH.09.2014.0841