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ご自身が、がんになったら

矛盾した言動をとってしまうことにも効用があります。我慢しなくてもいいのです

Q:

矛盾したことを言ったり、八つ当たりしてしまうことがあります。どうすればよいでしょうか?

つらい思いをしているがん患者さんの中には、矛盾した言動をとったり、ときに周囲の人々に八つ当たりしてしまうことで、悩んでいる方もいらっしゃいます。こうした事態はできれば避けたいところですが、実は効用もあります。怒りの発散はストレスの処理という側面もありますので我慢しなくてもいいのです。

保坂隆先生

答えてくださる方

保坂 隆先生
東海大学
医学部教授(精神医学)

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怒りの処理が内向きと外向きで違う

がん患者さんのご心情をお聞きすると、どうして自分ががんになったのだという怒りや悔しさのようなものが共通して見られます。その怒りや悔しさの処理の仕方が内に向いた場合と外に出た場合とで、それぞれの言動が大きく違ってしまうことがあるようです。

その怒りや悔しさが内に向いた場合は、例えば「あのとき、ああすればよかったな」、「あのとき、早く受診していれば、こんなにはならなかったな」といった形で、後悔して自分を責めてしまうようです。逆に、それが外に出た場合は、例えば「あの医者は、どうして早く自分の病気を見つけてくれなかったのだ!」、「検診を受けているのに、どうして再発したのだ!」といった形で怒りや否認になったりもします。

内にこもって自分を責めているのと、周囲に対して八つ当たりしているのとでは、一見すると、言動や表情が矛盾しているようです。しかし、元をたどって「怒りの処理の仕方」という視点から考えると私たちには皆さんの気持ちがよくわかるのです。

言いたいことを我慢せずにいることは、大きなストレスになるでしょう。ストレスを発散させることも時には必要です。意思表示をすることによって周囲とのコミュニケーションが以前よりも円滑になることもあります。がん患者さんのそばにいる、私たち精神科医や看護師は、皆さんのさまざまな思いを受け止めることのできる存在です。遠慮せずに心の内を打ち明けてください。

時間経過により受容と否認をくりかえす

がん患者さんは、時間経過とともに受容と否認を繰り返すことも多いようです。まず、がんの告知を受けたり、がんが再発したときには、いったん、それを受容する方向に向かいます。例えば「ああ、自分はがんだったのか」「やはり再発したのか」と思うのです。ところが、翌日になると、「いや、がんであるというのは間違いかもしれない」というように、否認する方向に振れる。その翌日、病院に行って看護師から検査のスケジュールなどを聞かされると、「やっぱり自分はがんだったのだ」と、また受容の方向に行く。ところが、その夜になると、「セカンドオピニオンを求めに行こうか」と、また否認の方向に振れるのです。

がん患者さんの心は、大きな視点で見ると、時間とともに右肩上がりで受容する方向に向かっています。しかし、小さな視点で見ると、朝と夜では方向が違っていたりするのです。朝には「頑張ろう」と言っていた患者さんが、夜には「やっぱり手術はやりたくない」と言い換えたとしても、それは決して矛盾したものではなく、小さな波の変化を見ているに過ぎないのです。

大きな視点で見てもなかなか受容できずに、ひどく落ち込んで何も手につかないような状態が続いたり、日常生活にも支障が出るような場合にはできるだけ早く心のケアを受けるようにしましょう。

 
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Last Updated: 2018/8/03L.JP.OH.09.2014.0841