TOP > ご自身が、がんになったら > がんになったら誰でも動揺するもの 不安がぬぐえないときは早めに精神科の受診も考えましょう
 
ご自身が、がんになったら

がんになったら誰でも動揺するもの
不安がぬぐえないときは早めに精神科の受診も考えましょう

Q:

がんを告知されて頭の中が真っ白になりました。

自分ががんにかかっていることが判明すると、不安が津波のように押し寄せてきます。がんが死を連想させる病気である以上、これは当然のことといえます。多くの患者さんは、激しい動揺を経験した後、時間の経過とともに落ち着きを取り戻していきます。どうしても、不安が拭えないというときは、主治医の先生に相談してみましょう。精神科医の協力を仰ぐことも効果があります。

大西秀樹先生

答えてくださる方

大西 秀樹先生
埼玉医科大学国際医療センター
精神腫瘍科教授

プロフィールを見る

告知から2週間は誰でも落ち着かない

ご自身ががんであると告知されると、「頭が真っ白になって、医師や看護師の説明が理解できなかった」「病院から自宅まで、どうやって帰ったのか覚えていない」という患者さんの声をよく聞きます。がんの治療成績は以前に比べると格段に向上し、治癒する患者さんも増えてきました。必ずしも悲観するような病気ではなくなったということができますが、依然として患者さんにとっては死を連想させる病気であることは変わりませんので、告知を受けたときに大きな衝撃を受けるのも当然のことといえるでしょう。

「何もわからなくなる」というのは、大きなショックから心を守るための防衛手段と考えることもできますが、患者さんはそれでは対処しきれないほどの大きな衝撃を受けています。

多くの患者さんは、告知をされてから1週間、激しい動揺が継続するようです。患者さんに聞きますと「どうしてわたしが、がんになるのか」、「そんなはずがない」という葛藤が続くようです。この段階では、告知を現実のものと受け止められないこともあります。

精神腫瘍医として、この段階の患者さんを診察することもありますが、ご自分の状況を受け入れることができる状態でない患者さんもいます。そのような場合には、まず、患者さんの話を聞いてから、ご本人の現状をねぎらい、「家でゆっくり休んでください」とアドバイスします。家族の方にも「患者さんを休ませてあげてください」と言います。

こうした衝撃の1週間が続いた後は、告知をやや現実のものと受け止めるようになります。しかし、それで気持ちが楽になるわけではありません。「これから先、どうしたらいいのだろう」「仕事は」「育児は」というような、むしろ以前にも増して具体的な不安に見舞われることになります。このような不安の期間がやはり1週間ほど続きます。この期間を経過して、ようやく衝撃から立ち直り、冷静に病気と向き合えるようになるというのが一般的な傾向のようです。

言い換えると、告知を経過してがんという病気を冷静に考えるようになるまで2週間は必要ということになります。つまり激しい動揺の期間はどんな患者さんにもあるといえます。

注意したい適応障害、うつ病

「2週間で立ち直ることが普通」というお話をしましたが、これには個人差があります。1割から3割の患者さんには、医学的に「適応障害」と呼べる症状が持続することがあります。適応障害とは、強いストレスによって不安、抑うつ、不眠、食欲低下などを来たす状態のことです。がんは自分でコントロールすることが難しく感じられる病気です。それまで思い通りの人生を送ってきた方も、がんという病気にとらわれることによって、無力感にさいなまれることになります。

患者さんの中には、抑うつが続き、不眠、食欲不振、集中困難など様々な精神症状や身体症状の現れることがあります。このような場合、うつ病を発症した可能性があります。

がんは心の病気でもある 放置してはいけません

がん患者さんを対象にした精神医学的有病率調査が行われた結果、約半数のがん患者さんが適応障害やうつ病などの心の病気と診断されてもおかしくない状態にあることが明らかになりました。最近では、がん患者さんの心の辛さや痛みをなおざりにすべきではないという認識が広まっています。がんは身体の病気だけではなく、心の病気でもあるということができるでしょう。

私は精神腫瘍学を専門としています。精神腫瘍学とはがん患者さんの心の状態とその対処法を研究し、患者さんがよりよい状態で生活ができるようにする学問の一分野です。心の病気を治そう、軽くしてあげようという医学です。「いくら心を治療しても、がん自体は治らないのではないか」と感じる患者さんもいるでしょう。確かに心を治療するだけではがんを治すことはできません。それでも心の治療はがんの治療に欠かすことができないものです。

身体の病気としてのがんの治療には、手術、放射線療法、化学療法があります。心の動揺が続いていたり、あるいはうつ病になってしまった場合は、それらの治療を継続できなくなる場合も少なくありません。ですから治療を有効なものとするためにも不安や抑うつを取り除くための治療が必要になります。

また、「抗がん剤の副作用による苦しみよりも心の苦しみのほうが辛い」と訴える患者さんもいます。抗がん剤の副作用は抗がん剤の治療が終わればなくなります。しかし心の苦しみは終わりがありません。身体的な治療が奏効して、回復したとしても、再発の不安がつきまといます。このような場合にも、精神科、心療内科に相談することをお奨めします。

不安、不眠、食欲がないなどの変調が続いたら、まずは、主治医に相談してください。可能であれば精神腫瘍学の専門医に紹介してもらえるはずです。ただし、残念ながら精神腫瘍医の数は十分ではないので、身近にそうした専門家がいないこともあります。そのようなときには精神科医を紹介してもらえると思います。

がんとわかって動揺することは当たり前ですが、それが持続するようなら、早めに精神科医、心療内科医の協力を仰ぐようにしてください。それが身体的な治療を円滑に進める道でもあります。

 
掲載されている情報・データはあくまで一般情報であり、個別の患者さんとその治療に関して特定の治療法などを推奨したりするものではありません。治療に関しての判断は、主治医などの医療者とご相談のうえご自分でなさってください。バイエル薬品株式会社は、当サイトを読んだことが引き起こすことに関して一切の責任を負いません。
 
Last Updated: 2018/8/03L.JP.OH.09.2014.0841