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ご両親が、がんになったら

患者さんのサインを共有して、思いを汲み取る

Q:

認知症の親ががんになりました。
治療を受ける上での注意点を教えてください。

認知症とがんの併発は看護、介護をしている側の負担を高めます。患者とのコミュニケーションが難しいことが大きな原因です。患者さんのサイン、顔の表情や仕草から患者さんの気持ちを汲み取ることが家族にも医療者にも求められます。

小田文香さん

答えてくださる方

小田 文香 さん
聖路加国際病院
血液内科
看護師

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患者さんの代弁者としての家族の役割

‘超’高齢化が進む日本社会で、がんと認知症はそれぞれに大きな課題ですが、この2つと同時に向き合っていかなくてはならないケースは、今後ますます増えていくことが予想されます。

認知症の患者さんががんを発症された場合、ご家族にかかる負担は相当なものだと感じます。認知症の介護だけでも大変な上にがんが加わるわけですから、この先どうすればよいだろうという不安が家族を襲います。認知症の重症度にもよりますが、コミュニケーションを取ることも難しい場合、ご家族が患者さんを介さずに医師と話し合って、直接治療方針などを決定されていくことが多いようです。

患者さんの生活背景や性格などを踏まえ、お気持ちを汲み取りながら、代弁していく作業は、家族とはいえ容易ではありません。ちょっとした顔の表情や行動で患者さんのお気持ちを読み取っていくことが必要になってきます。

患者さんのサインを医療者と共有する

私の祖母の話になりますが、「要介護5」の認知症であるところに大腸がんと判明し、3年前に手術を受けました。主な介護者は祖父で、認知症で話せなくなっていた祖母に代わり、「眉間にしわが寄っているから痛みがあるのではないか」「さっきまでは仰向けで寝ていたのにお腹を押さえて猫背になっているから、手術痕が痛んでいるのではないか」「いつもの声の調子と違うからつらいのではないか」と、些細なことを見逃さず、医療者に伝えていました。親子ではなく夫婦の例にはなりますが、親御さんが認知症でがんという方にとっても参考になるところは少なくないのではないでしょうか。

自分の知っている情報を医療従事者に伝えて、患者さんのサインを共有する。ご家族自身が患者さんのそばにいられない時でも、サインを医療従事者が汲み取ることができますので、サインの共有はとても重要です。

祖母の場合は認知症からがんという経緯でしたが、がんの患者さんが認知症を併発された場合、意思決定が患者さんからご家族に移っていくことの負担は計り知れません。いままで医師とコンタクトをとりながら意思決定をしていたにもかかわらず、それができなくなっていくことへ、患者さん自身が大きな不安を抱かれます。ご家族はご家族で、自分の親の判断能力が鈍ったり、コミュニケーションを取れなくなっていく様子を目の当たりにするわけですから、とても心を痛められます。

治療を受ける主体は患者さん。理解に限界はあるが説明する姿勢をもち続ける

認知症の進行度にもよりますが、患者さんご自身で判断できることと、できないことのぶれが次第に生じてきます。それでも、できる限りのことを患者さんに理解いただき、ご自身で判断していただくことが理想と考えます。たとえば、患者さんに理解力がないと思われる場合でも、インフォームド・コンセントの際には、ご家族と一緒に同席してもらう姿勢が大切であると私は考えています。わからないだろうから、本人には一切説明しないというご家族もいらっしゃいますが、実際には後で、「あのときに話をしておけばよかったかな」と後悔される方も少なくありません。

祖母の例に戻りますが、祖父はインフォームド・コンセントの際には同席させなかったにしても、後ですべて自分の口から説明をしていました。切除したがんを祖父が自分で見て、どのくらいの大きさでどんな状態だったかを伝えていたのです。祖母が理解しているか否かは別として、すべての情報を共有しているということがとてもよいと感じました。

いずれにせよ、大切なことは、治療を受ける主体は患者さんであることを常に意識する。家族のエゴをいかに抑えるかも、治療方針を決定していく上での欠かせないポイントではないでしょうか。

 
掲載されている情報・データはあくまで一般情報であり、個別の患者さんとその治療に関して特定の治療法などを推奨したりするものではありません。治療に関しての判断は、主治医などの医療者とご相談のうえご自分でなさってください。バイエル薬品株式会社は、当サイトを読んだことが引き起こすことに関して一切の責任を負いません。
 
Last Updated: 2018/8/03L.JP.OH.09.2014.0841