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ご両親が、がんになったら

「ここは私の場所」
という気持ちで食欲も回復

Q:

食欲を回復させる具体的な方法を教えてください。

食欲は、患者さんの体力や生活の質(QOL)の維持に密接に関係しています。基本的に食欲を回復させるためには、患者さんが常に安心感を得られるような生活設定が大切です。自身の病院の環境整備やお茶会の開催で成果を挙げてきた東口先生に聞きました。

東口高志先生

答えてくださる方

東口 高志 先生
藤田保健衛生大学
医学部外科・緩和医療学講座教授

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がんになると、程度の差はありますが、栄養状態に影響が出ます。栄養のバランスが崩れた身体では、どんなに良い治療やケアを行っても、その効果も限られたものになります。生体内の代謝・栄養学的状態は、人と人との間に生まれる心の触れ合いや生活環境からも働きかけを受けます。そう考えると、触れ合いや環境が栄養状態を介して、病気の進行状況や病状を変えることも不可能ではないということができます。親ががんになって食が細くなっても、「仕方ない」と諦める前に試みる価値が少なからずあるように思います。

できる限り栄養は口から取りましょう

がん患者さんの栄養を説明するにあたって、強調したいことは、栄養はなるべく口から取るようにするということです。当たり前のようですが、意外とおろそかにされています。

こういう栄養の取り方を医学的には“経口摂取”といいます。経口摂取には様々な利点があります。食べることはエネルギーを取り入れるという目的だけの行為ではなく、口で噛む、匂いの刺激を受ける、味を感じる、見た目を楽しむ、食べるための動作を含め“人としての根源的な行為”であり、同時に楽しみでもあり、癒しにもつながる行為です。

医学的にどうしても輸液に頼らなければいけない状態もありますが、可能な限り口から栄養を取れるように配慮してほしいと思います。

私の病院には、進行した患者さんが多くお見えになります。もう経口で栄養を取ることができなくなったとされる患者さんも少なくありません。しかし、本当に経口摂取が不可能な患者さんは、これまでの経験から全体の8%程度に過ぎません。本当の末期になった患者さんは別ですが、多くの患者さんは適切な栄養管理でわずかな量でも再び経口摂取が可能になるように思われます。

安心感から経口摂取が復活

私の病院では、癒し環境の構築、コミュニティーの導入に力を入れています。

例えば、病棟に飾るすべての絵画は、患者さんが最も見やすい、絵画の中心が床から140cmの高さになるように設置しています。その絵画も季節ごとに変えています。花壇ではいつも花が咲いているようにしています。院内のコミュニティードームでは毎週、決まった時間にお茶会を開き、患者さんに医療スタッフや患者さんの子供さんらを交えて談笑の場をつくっています。

こういう風にすると、患者さんは「この病棟は私たちのためにある」と理解し、安心感を得るのです。経口摂取ができなかった患者さんがお茶会に参加しただけで、経口摂取が可能になった例もありました。

こうした催しを導入するようになってから、経口摂取可能な期間も生存期間も延びました。がん患者さんは感染症など他の原因で亡くなることも少なくありませんが、私たちの病院ではそのような患者さんは、ほとんどなくなりました。

栄養管理といっても、それは医療機関や医療スタッフに限定された仕事ではありません。患者さんに安心感を与えるコミュニケーションや環境は、栄養状態を改善して、生活の質を改善するうえでも欠かせないといえるでしょう。親が患者になった場合、一度考えていただきたい大事なことだと思います。長年別居が続いた親ががんになった場合、どうしても打ち解けないというケースもあるでしょう。このようなときこそ、子供の方からの歩みよりが必要です。

 
参考資料:

東口高志:実践!がん患者の栄養管理と疼痛管理,癌の臨床,53,199-209,2007

東口高志:がんの緩和ケアにおける栄養療法,日本医事新報,4446,60-64,2009

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Last Updated: 2018/8/03L.JP.OH.09.2014.0841