TOP > ご両親が、がんになったら > 栄養への気配りは“患者さんへのいたわり”です 適切な栄養管理に注意してください
 
ご両親が、がんになったら

栄養への気配りは“患者さんへのいたわり”です
適切な栄養管理に注意してください

Q:

食欲が落ちてきたのですがどうすればいいでしょうか?

心と身体は本来2つで1つのものです。心のケアは良好な体調に支えられる側面が大きいと東口先生は指摘しています。体調の維持には、何よりも適切な栄養管理が欠かせません。がん患者さんの栄養管理の大切さを東口先生にお聞きしました。

東口高志先生

答えてくださる方

東口 高志 先生
藤田保健衛生大学
医学部外科・緩和医療学講座教授

プロフィールを見る

本来、心のあり方は身体の状態と表裏一体の関係にあります。がんになると、心を健康な状態に維持することが難しくなりますが、それを確保するためには、実は身体の状態への配慮が欠かせません。特に、疼痛があったり、栄養バランスが崩れたままでは、心の安定もままならなくなります。このことは、ご自分のことを考えると簡単に理解していただけると思います。ここでは、栄養管理の大切さを中心にお話したいと思います。

よい食事は、よいコミュニケーションから

最近は親と独立して生活していた子供さんが、親ががんになって一緒に生活するようになるというケースが珍しくありません。親子の関係ですから、コミュニケーションに問題はないと考えがちですが、長く別居してきたために遠慮が生まれて、子供に言いたいことが言えないという患者さんがいることも事実です。子供の方から、積極的にコミュニケーションをはかることが大切です。

栄養管理という観点から見ると、患者さんが十分に食事を取っているのかという点に注意して欲しいと思います。患者さんに「ごはんはきちんと食べていますか」とお聞きすると「ええ、ちゃんと食べています」と答える患者さんは多いのですが、よくよく内容をたずねてみると、「ごはんはお茶碗に3分の1くらい」と大変少ないということがよくあります。ごはんを食べているからいい状態ではなく、本当にそれで十分であるかどうかを、常に考えてみることをお奨めします。

栄養状態が改善すると元気がもどってくる

がんが進行するとやせてきて、活力も無くなっていきます。「がんだから仕方ない」と本人も周囲も考えがちですが、本当でしょうか。がんになると正常な代謝が損なわれ、やせてくることはある程度避けられませんが、適切な栄養管理を行うことによって患者さんの身体状況は大きく改善されるものです。

健康な状態であっても、傷ができるとその修復にエネルギーが必要になります。このとき身体は体内のたんぱく質を使います。ストレスや感染症、がんになればやはり体内のたんぱく質は消費されますし、手術や抗がん剤の投与、放射線療法などでも同様にたんぱく質が使われます。ある水準を超えて体内たんぱく質が減少すると、生命の維持すら難しくなります。ですから、身体のたんぱく質をなるべく減らさないように栄養を管理することが必要です。

がんだからやせてくるのは仕方ないと判断する前に、できることがないかを考えてほしいと思います。

私の病院では「余命1ヵ月程度」と診断された患者さんがやってきます。感染症や床ずれなどを持って、お見えになる患者さんも少なくありません。気持ちも沈みがちです。こういう患者さんの栄養状態を評価して、食事や輸液などを利用して適切な栄養管理を行うと、すべてではありませんがかなり多くの患者さんは見違えるように元気になります。感染症や床ずれも改善されます。末期がんであっても、栄養状態を適切に管理することによって寿命も長くなります。気分も明るくなり、積極的になります。患者さんによっては、入院当初は不可能と考えられていた帰宅が可能になる例もあります。

栄養サポートチームの積極的活用を

栄養管理といってもどうしたらいいか。そこで、私は病院の「栄養管理チーム(NST)」を活用することをお奨めします。現在、がんを治療する多くの病院がNSTを擁しています。

NSTには、医師、看護師、薬剤師、栄養士、臨床検査技師らが参加、患者さんの栄養状態を把握して、一人ひとりの患者さんに合った栄養プログラムを作成しています。NSTの専門家と患者さん、家族が相談して適切な栄養管理を患者さんに提供していただきたいと思っています。栄養を適切に管理することは、患者さんをいたわることでもあります。ぜひ遠慮なく主治医や看護士に、栄養管理の方法についてお尋ねいただければと思います。

 
参考資料:

東口高志:実践!がん患者の栄養管理と疼痛管理,癌の臨床,53,199-209,2007

東口高志:がんの緩和ケアにおける栄養療法,日本医事新報,4446,60-64,2009

掲載されている情報・データはあくまで一般情報であり、個別の患者さんとその治療に関して特定の治療法などを推奨したりするものではありません。治療に関しての判断は、主治医などの医療者とご相談のうえご自分でなさってください。バイエル薬品株式会社は、当サイトを読んだことが引き起こすことに関して一切の責任を負いません。
 
Last Updated: 2018/8/03L.JP.OH.09.2014.0841