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ご両親が、がんになったら

「告知後のケア」が十分できるかどうかで決めましょう

Q:

高齢の親にがんであることを告知すべきでしょうか?

がん患者さんへの病名の告知は一般的になってきましたが、くわしい病状や余命まで宣告するケースはそう多くはありません。がんになった親を自宅で介護する場合、告知はどの程度必要でしょうか。告知をしなくても、自宅で最期まで過ごせるのでしょうか。

川越厚先生

答えてくださる方

川越 厚 先生
医療法人社団パリアン
クリニック川越
理事長・院長

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大事なのは「残された時間は限られている」ことを知っているかどうか

一言で「告知」と言っても、その内容はいろいろです。患者さんに何を伝えるか。病名を言うのか、今後どのような病状をたどるのかをくわしく説明するのか、余命を言うのか。

がん患者さんの在宅医療を始めるとき、患者さんの認識に関して私が最も重視するのは、ご本人が「残された時間は限られている」ということを知っているかどうかです。これは告知されているかどうかにかかわらずです。私が診ている在宅のがん患者さんの中には、はっきりした告知を受けていない人が約4割います。このような状況では告知うんぬんではなく、患者さん自身が自分の状態に気づいているか、「死への準備」ができているかがとても重要なのです。

「残された時間は限られている」ことを知っているかどうかで苦しみ方が違う

ここで患者さんのご家族に知っておいていただきたいのは、「残された時間は限られている」ことを知っているかどうかで、その患者さんの苦しみの内容が違ってくるということです。

まず、「残された時間は限られている」という状況を理解していない人、違う病名を言われるなどして励まされ続けている人の場合、不安や不信、うつ、パニックといった心理的な苦痛が全面に出てきます。これに対し、死を意識している人、「残された時間は限られている」という状況を意識しながら生きている人の場合は、「何のために生きているのか」「自分の人生はこれでよかったのか」といった悩みが募り、それが強い苦痛となって出てきます。このような痛みをスピリチュアル・ペインといいます。

告知は、こうした違いを周囲が理解し、その痛みを受け止める準備ができてはじめて行われるべきです。告知によって患者さんがどういう反応をし、どのような終末期を選ぶのかを考え、それに沿った対応をするのががん医療に携わる医師の務めです。死期が近いと知った患者さんの多くは自宅にいることを望みますから、その場合はスピリチュアル・ペインを含めて患者さんの苦痛をやわらげてくれる在宅医の存在が不可欠です。もちろん家族も、告知後に十分なケアができるよう心の準備をしなければなりません。

「最初に告知ありき」ではない

医療者の中には、告知は必要不可欠だと言う人もいます。病状が進行していくがん患者さんをしっかりケアしていくためには、患者さんと家族が真実を分かち合うこと(トゥルース・シェアリング:Truth Sharing )が非常に大事だからです。しかし、これはあくまで一般論であって、病名も病状もよく知らないままうまくやっていくということが、特に高齢の患者さんの場合にはよく見られます。一般に、若年のがん患者さんはなかなか自分の死をイメージしないのに対し、高齢の患者さんは理由が何であれ、自分自身の体が弱っていくのに伴い、死期を自然に悟る傾向があります。この意味では、わざわざ病状や余命をくわしく説明する必要がない場合も多いといえます。

告知すべきかすべきでないかは一律ではありません。頭だけで考えて結論が出ることでもありません。患者さんの生き方、性格、家族の状況、医療環境などさまざまな要素を考え、感じながら決めていくことです。医師の立場でいえば、「あと2、3カ月です」などと宣言するのではなく、「春が迎えられるかな」「桜が見られるといいですね」というように、患者さんとの日頃の会話の中でさりげなく、かつ、きちんと伝わる形で告知ができたら理想的だと思います。こうした自然な告知ができ、さらに告知後、家族の十分な支えが得られ、患者さん自身も気がかりを残すことがなくなったとき、患者さんにとっても家族にとても、最期の日々はとても充実したものになるのです。

 
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Last Updated: 2018/8/03L.JP.OH.09.2014.0841