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ご両親が、がんになったら

モルヒネは指示通り使いしっかりと疼痛管理。
あるがまま、その人らしく、過ごしていただく

Q:

高齢患者の在宅療養を行う場合の注意点を教えてください。

療養期間が比較的短い点、亡くなる直前まで自分で歩行や食事ができる点など、がん患者さんの在宅療養はほかの病気の患者さんと少し違います。そのなかで、高齢患者ゆえの特徴はあるのでしょうか。高齢の患者さんやその家族が特に注意したい点はどんなことでしょうか。

川越厚先生

答えてくださる方

川越 厚 先生
医療法人社団パリアン
クリニック川越
理事長・院長

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“介護力”を見極めた支援が必要

比較的年齢層が幅広いがん患者さんの中で、高齢の患者さんが特に大きな問題を抱えているかといえば、そうではありません。若い患者さんに比べて症状は比較的落ち着いていますし、痛みを感じにくいこともあって、医療的な管理はむしろしやすい傾向があります。

ただし、その患者さんを介護する家族も高齢であったり、一人暮らしであったりすると、十分なケアが受けられない可能性があるので、在宅療養を始めるときにはまずその家庭の“介護力”を見極めることが必要です。そして家族の負担、特に高齢の配偶者の負担が過剰にならないように気をつけます。介護の準備は、在宅医や看護師、ケアマネジャーなどに相談しながら進めるとよいでしょう。何か困ったことがあったときにはすぐに応援を呼べる体制も整えておきましょう。

在宅医療に関しては複雑な作業を家族に強いないように心がけています。「難しくてできない」と家族が思ってしまうと、それが精神的な負担になり、在宅療養がとても辛いものになってしまうからです。

薬の飲み忘れ・飲み過ぎに注意

日常生活の中で気をつけていただきたいのは薬の服用です。薬は決められた通りに飲まないと効果が得られなかったり、強い副作用の原因にもなることもあるので、必ず処方通りに服用できるよう工夫します。中でも痛みの緩和に用いるモルヒネは、指示通り使うことが大切です。絶対に飲み忘れたり飲み過ぎたりしてはいけません。痛みのコントロールがうまくいかないと、在宅療養自体が継続不可能になってしまいます。

具体的な工夫としては、「おくすりカレンダー」など、日付や時間ごとにポケットやケースがついた専用の入れ物に、その日、その時間に飲む薬を仕分けして入れておく方法があります。それでも不安の残る患者さんの場合には、看護師や薬剤師、ヘルパーが服用時の見守りやチェックを行うシステムもあります。モルヒネに関しては、3日間連続で作用するパッチタイプも出ているので、医師に相談し、使いやすい薬を処方してもらうことも有効です。

認知症のある患者さんについてはさらなる注意が必要です。以前、ある女性患者さんが頻繁に服を脱いでしまい、家族が困っていたケースがありました。周囲の人は認知症による異常行動だと考えていたのですが、あるときモルヒネの量を増やしてみたところ、問題の行動がなくなりました。おそらくその患者さんはがんによる痛みを、服を脱ぐことで表現していたのだと思います。こうしたことからも、認知症の人の場合には、その言動から何を訴えているのか周囲が察してあげることがとても大事だと思います。

ほかにも夜間の徘徊による転倒、失禁、その他諸々のトラブルが想定されます。もし、こうしたトラブルに耐えかねて家族が施設入所を望んだとしても、末期がん患者さんで認知症のある人を受け入れてくれる介護施設や病院は残念ながらほとんどありません。そうした現状も事前に理解しておき、何かあっても冷静に対応するような、ある種の覚悟を持つことも必要です。

最後まで人としての暮らしを大切に

高齢の患者さんが自宅で療養する場合の注意点を思いつくままにお答えしましたが、基本的に私が強調したいのは、モルヒネを指示通り使い、しっかりと痛みをコントロールすることだけです。それ以外の生活は自由と考えて構いません。何か特別なことをしたり、無理に安静にする必要はありません。むしろごく普通に暮らすこと、以前どおりの生活を維持できるというところに在宅療養のよさがあります。体にさわるからあれもしないこれもしない、負担になるような話はしないなどと構えるのではなく、本人が望むことは何をしてもよい、頭で考えず楽しく自然な会話をすれば十分です。ときにはお子さんの立場で相談を持ちかけたっていいのです。

在宅医療とは、その人が亡くなるまで人としての暮らしを大事にできる医療です。せっかくそうした医療を選択したのなら、できるだけそのよさを享受していただきたい。あるがまま、その人らしく。そんなふうに過ごしていただければと思います。

 
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Last Updated: 2018/8/03L.JP.OH.09.2014.0841