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ご両親が、がんになったら

患者さんが治療を嫌がることには理由がある。
行為の背景にある根本的な原因を把握することが大切

Q:

認知症の親が治療を嫌がります。
どのように説得すればよいでしょうか?

認知症で理解力が低下した患者さんが、がんの治療を拒むことがあります。とにかく説き伏せて、治療に応じさせるというのでは患者さんの拒否は強くなるばかりです。どうして、治療を受けたくないのかその理由を明らかにすることが大切です。すぐにわからなくても、医療者と相談して、解決の糸口を探していくとよいでしょう。

小田文香さん

答えてくださる方

小田 文香 さん
聖路加国際病院
血液内科
看護師

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行為の背景には理由がある

認知症の患者さんが治療を拒まれると、つい「認知症だから、理解力が低下してなんでも嫌だと言うのだろう」と片付けてしまいがちです。しかし、なにかしら理由があって拒否されている―たとえばほかの患者さんが抗がん剤の副作用で嘔吐されるお辛い姿を見て、治療を拒否されているのに、ただわがままを言っているように誤解されてしまうということも実際にありました。

また別の例ですが、患者さんが車椅子に乗ることをとても嫌がっていらっしゃるという場面がありました。この患者さんは、手術の際に車椅子に乗せられた経験が心に大きな恐怖感として残っていて、車椅子に乗るとまた恐ろしいところへ連れて行かれるに違いないと拒否されていたのです。そうした背景が汲み取れておらず、「判断能力があやふやだから寝ているよりも起きていることが辛くて車椅子を嫌がっているのだろう」というように憶測で片付けてしまうことは恐ろしいことです。

家族だからこそ知りうることがある

なぜその治療を患者さんが嫌がっているのか、根本的な理由を緩和しないことにはいつまでたっても並行線です。まずは理由を汲み取ることが大切です。

「認知症だからただなんでも嫌がっている、では丸め込んで治療を進めていけばいい」となるのは一番恐ろしいことだと思います。

根本的な理由は患者さんしか知らないこともあれば、ご家族がご存知なこともあります。核家族化が進み、親とは長年住んでいないからよくわからないとおっしゃるご家族もいますが、些細に思えることでも、患者さんとの歴史があるご家族だからこそご存知である情報が、解決の糸口になることは少なくありません。ご家族の皆さまの持っている情報を、ぜひ医療従事者に提供していただければと思います。

最も大切なことは治療を拒む理由を明らかにすること

もちろん私たち医療者側も患者さんの思いをきちんと受け止める心構えが求められます。患者さんやご家族の一番近くでコミュニケーションを取ることができる存在が看護師であるにも関わらず、患者さんが大事だと思っていらっしゃることを看護師が見逃してしまうことも少なくありません。私たち看護師は、伺ったお話の中から重要なものを判断する能力をつけることが、とても大事だと考えます。

一方で、ご家族もさまざまで、毎日担当を決めて献身的に看病に当たられるご家族もいれば、荷物だけを置いてすぐにお帰りになるご家族もいらっしゃるので、すべてのご家族と深くコミュニケーションを取ることが難しいというのも現状です。

ご家族と医療者がコミュニケーションを密にして、些細なことでも情報共有しておくことは、治療において重要な鍵となります。実際に、ご家族が積極的に情報を提供しつつ、医療者からも適切な情報提供を受けて、円滑なコミュニケーションのもとに患者さんの介護、看病にあたった場合には、いい方針で治療を進めることができたと、自負を持って振り返られるご家族のご姿がよく見受けられます。

患者さんがなぜ治療を拒まれるのか、なにを望んでいらっしゃるのか。患者さんの思いを尊重しつつ、ご家族と医療者が同じ目標に向かって進んでいこうという姿勢が明確になれば、患者さんご自身が適切なケアを受けられるだけでなく、結果的にはご家族の抱えるストレスの軽減にもつながっていくことでしょう。

 
掲載されている情報・データはあくまで一般情報であり、個別の患者さんとその治療に関して特定の治療法などを推奨したりするものではありません。治療に関しての判断は、主治医などの医療者とご相談のうえご自分でなさってください。バイエル薬品株式会社は、当サイトを読んだことが引き起こすことに関して一切の責任を負いません。
 
Last Updated: 2018/8/03L.JP.OH.09.2014.0841