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「大切にしたい、いのちのビジョン」開設にあたって 近畿大学医学部腫瘍内科 西條長宏

国をあげてがんによる死亡を激減させることを目標として、がん対策基本法が平成18年6月議員立法により成立し、平成19年4月から施行されました。法律に基づいて作成されたがん対策推進基本計画に①がん登録の推進、②放射線療法・化学療法の推進とこれらを専門的に行う医師などの育成に加え、③治療初期段階からの緩和ケアの実施があります。「大切にしたい、いのちのビジョン」は、がんと診断された時からがん患者のかかえる身体的・精神的苦痛及び、がん患者の関係者に対し、その対応の一助となるべく企画されたものです。

「最高の人生の見つけ方」という映画を御覧になった方も多いかと思います。この映画の英語でのタイトルは「The Bucket List」となっていました。主人公はモーガン・フリーマンの扮する自動車整備士のカーターとジャック・ニコルソンが扮する病院経営などを行う大金持ちの実業家エドワードです。二人は進行がんになり、化学療法を受けるため入院した病院で相部屋になりました。(この病院はオーナーであるエドワードが病室を全て二人部屋に設計)カーターは、善良な労働者で家族に恵まれていますが、エドワードは何回も離婚を繰り返しお金で全てを解決してきた“わる”で、病室を訪れるのは身の回りの世話をする男の秘書(皮肉っぽい味のある演技)のみでした。対照的な二人がともに末期がんで余命6カ月と宣告されました。カーターが書き出した生前に叶えたい事のリスト、“The Bucket List”を見たエドワードは、それを実行しようと、自身のしたいことを書き加えました。二人は周囲の反対を振り切り病院を抜け出し、世界の名所の旅行、スカイダイビング、ムスタング等を用いたカーチェイスなど、やりたい放題の事をしましたが、最終的にはやはり家族の絆が大切という結論でした。一つ一つのシーンがよく考えられて制作してあり、勿論名優二人の素晴らしい演技力も加わり、どのセリフも説得力がありました。

余命6カ月と言われた時、絶望で打ちひしがれうつ病になるか、残された時間を徹底的に有効に使おうと考えるかなど、様々な議論はできると思いますが、何が本人にとって最も重要かは、当事者にならないと決して正解は得られないと思います。がん対策基本計画の緩和ケアの名の下、色々な活動が行われていますが患者のためになっているか否かを、誰でも納得できる指標で定量的に評価する努力をしなければ自己満足にすぎないという気がします。定量的に評価できる指標をつくり、それが妥当なことを証明してゆくことが必須であり、その努力が我が国の緩和ケアの発展につながると思います。日本の緩和ケアの進歩に厚生労働省は力を入れていますし、国民の期待も大きいと思います。情緒的にならず、グローバルと共通の土俵でその成果を議論する日の来る事を期待しています。

2009年12月

 
Last Updated: 2018/8/03L.JP.OH.09.2014.0841