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お子さんが、がんになったら

説得しようとしてウソをつくことはよくありません。

Q:

子どもが治療を嫌がります どのように説得すべきでしょうか?

子どものがんの8割程度は治癒可能になりましたが、2割の難治性の患者さんは残念ながら亡くなっていることも現実です。助かる病気になったからこそ、亡くなる患者さんとそのご両親にとっての疎外感、孤独感、絶望感は強くなります。真実を伝えるとともに、癒しを提供することも医療者としての務めだと思います。

細谷亮太先生

答えてくださる方

細谷 亮太 先生
聖路加国際病院 副院長
小児総合医療センター長

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年齢による説得方法の違い

お子さんが病気と向き合うためには、年齢毎の理解力に応じてわかりやすく説明し、出来る限り本人が納得したうえで治療を進めることが大切です。0~15歳くらいまでの子どもの場合は、「嫌だ」と言っても「きちんと治療すれば治る病気だよ」、「早く治して学校へ行こう」と説得をした上で治療を行います。16歳以上の高校生くらいになるとご両親とほぼ対等に子どもの意見を尊重します。理解力もあるので治療内容をきちんと話し、「小児のがんは治る」ということを説明します。20歳以上になると法律上も成人ですから説明や説得はしますが、本人が治療を拒否した場合はそれ以上のことはしません。

子どもと話すときのルールを持つ

子どもに病気のことを話すとき、私は3つの自分のルールを持っています。1)嘘は絶対につかない。2)子どもにわかるように話す。3)話をしたときにその子どもがどんな風になるかというイメージをちゃんと持ちながら話す。

「嘘は絶対につかない」と決めているため、治療を嫌がる子どもに対して「治るから、がんばろうよ」と言えなくなることもあります。そんなときでも、例えばスイカの好きな子どもだったら、「今、治療をしておけば来年のスイカが食べられるからやってみようよ」という具合に嘘をつかない範囲で話をして、治療を勧めています。

20歳を超えた小児がんの患者さんの場合、最終的には本人の判断に任せることになります。かつて大学病院から紹介されて当院にやってきた20歳の小児がんの女性患者さんがいました。彼女は大学病院で「肺に水がたまったら終わりだから」と聞かされてきたようです。私が評価すると転移しているのは1カ所だけだったので、「もう少しだけ治療をしてみないか」と言って治療を開始しました。すると肺に水がたまってきたのです。彼女は「肺に水がたまるとはどういうことか説明して欲しい」と私に質問してきました。そして「今後どのくらい生きられるのか」と。

彼女のご両親は「『肺に水がたまっている』と聞くと娘は死ぬと思っているから、告知は止めて欲しい」と言ってきました。しかし、娘さんといえども成人ですので、私は彼女の質問に対して、厳しい言葉とは十分に思いながら「短ければ数カ月、長ければ1年、2年生きられるよ」と回答しました。それを聞くと彼女は「家に戻ってやっておきたいことがあるから」と返事をしました。20歳を超えたら一人前の大人ですから、私は彼女の判断を尊重しました。

2割の患者さんは助からないという現実

子どものがんは8割が治ります。しかし、残念ながら残りの2割は今の医学では助けることができません。助かるお子さんたちが増えたからこそ、「自分の子どもが死ぬことに耐えられない」と話すご両親のお気持ちも十分に理解できます。

私は昭和22年生まれですが、当時は栄養状態も悪く医療も普及していないため1,000人の赤ちゃんが生まれると1歳になるまでにおよそ70人が死んでいました。子どもを失った親の悲しみはいつの時代も計り知れないものですが、当時は、周りにも「自分も子どもを亡くした」という方が数多くいて、話し相手になってくれたものです。

現在は1,000人の赤ちゃんが生まれると1歳までに死ぬ数は2人までに減りました。医学・医療の進歩、栄養の劇的な改善で救われる子どもが増えたのです。しかし、子どもの死亡率が低いからこそ、お子さんを失ったご両親にとっての悲しみはより深くなります。「なぜ自分の子どもは助からなかったのだろう」という思いが強くなるのです。

1977年、私は米国に留学しましたが、その直前に小児がんの患者さんの不幸が続きました。子どもを亡くしたご両親たちを招いて、病院で会合が開かれました。そして誰からとも無く「このまま別れるのは惜しいから、毎年、集まろう」という声が上がり、そうして始まったご両親たちの集いは今でも続いています。

なんとかして救いたい、助けたいと思うのはご両親の気持ちとして当然です。しかし、人間には運命もあります。そのことを認識した上で、子どもにどこまで治療をするのかを一緒に考えていくことも大切だと思います。

 
掲載されている情報・データはあくまで一般情報であり、個別の患者さんとその治療に関して特定の治療法などを推奨したりするものではありません。治療に関しての判断は、主治医などの医療者とご相談のうえご自分でなさってください。バイエル薬品株式会社は、当サイトを読んだことが引き起こすことに関して一切の責任を負いません。
 
Last Updated: 2018/8/03L.JP.OH.09.2014.0841