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お子さんが、がんになったら

転移しやすいが治りやすい子どものがん

Q:

子どものがんと大人のがんの違いについて教えてください

子どものがんには、「胃がん」、「肺がん」、「大腸がん」といった大人でよく見られるがんはほとんど見られません。そしてもう一つ大人のがんと異なるのは、子どものがんの70~80%が治るということです。

細谷亮太先生

答えてくださる方

細谷 亮太 先生
聖路加国際病院 副院長
小児総合医療センター長

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大人のがんと子どものがんはまったく異なる

大人のがんと子どものがんは、性質がまったく違うものです。大人のがんはゆっくり進んで、大きくならなければ転移しません。乳がんは1cmの大きさになるまで5~10年かかります。これに対して子どものがんは急速に進みます。子どものがんで最も頻度の高い白血病は、1個の細胞が4カ月後には10の12乗~13乗個にまで増殖します。

子どものがんは早期に見つかっても、その増殖の速さから転移している可能性が高いので、がんを切りとるだけでなく、切りとった後に放射線療法や化学療法で再発の芽を摘んでおくことが必要になります。そのため小児がんでは早くから外科的療法、放射線療法、化学療法を組み合わせたトータルケアが実践されており、その技術は目覚ましく進歩してきました。

また、発症率も大きく異なります。大人の場合、1年間に約60万人の方が新たにがんと診断されて、約30万人の方ががんで亡くなっています。日本では1年間に100万人の方が亡くなりますが、その1/3が大人のがん患者さんと言えます。

一方で子どもの場合は、がんと診断される患者さんは1年間に2500~3000人程度です。これを子どもの人口に照らすと、お子さんががんにかかる確率は、ほぼ1万人に1人と、非常に小さい割合といえます。

年間に40万人発症する大人のがん、2500~3000人発症する子どものがん、二つのがんはそれぞれ別のものですが、その研究や治療に関しては大きく関連しながら発展してきました。

小児のがん治療の歴史

小児のがんの治療が成功したのは戦後のことです。子どものがんが治せると最初に報告されたのは1947年でした。ハーバード大学のシドニー・ファーバー教授が子どもの白血病の寛解例(完全に治った症例)を「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン(The New England Journal of Medicine)」に発表しました。白血病の治療ができれば、骨肉腫や横紋筋肉腫の治療もできるかもしれないと、多くの小児科の医師がこの成功に勇気付けられました。

1947年に白血病治療が成功して以降、外科的療法、放射線療法、化学療法を使ったトータルケアで子どものがんを治療する方法が米国の医師を中心としたネットワークで考えられてきました。症例数が少ないがゆえに、各国施設同士の情報交換が活発化し、子どものがん治療の研究は組織的・体系的に進んできたと言えます。今では子どものがんの80%近くは治せるところまで医学は進歩してきています。

子どものがん患者さんは、治療後に何十年という長い人生が続きます。私たちは、成人後も障害が出ないように、結婚されたときにお子さんを持つという選択ができるように、治療していくことを心がけます。数十年前は、治すことだけを考えて化学療法を繰り返していました。アルキル化剤という薬でがん細胞は退治できるのですが、その後の調査で不妊になることがわかり、今ではなるべくこうした薬を使わずに慎重に治療するようになりました。

化学療法の発達で劇的に高まった治癒率

どんな患者さんに対しても、「何とかして助けてあげたい」という気持ちが医師にあります。特に、小児のがん患者さんにおいては、医師の強い情熱から、外科、放射線科、小児科が協力して治療を行うトータルケアが昔から盛んに実践されてきました。小児がんの領域で実践されたトータルケアが、大人のがん治療まで普及するようになってきたのです。

また、大人のがん治療のために開発された化学療法が子どものがんの治癒率を高くしてきました。抗がん剤は子どものがんに極めてよく効きます。急速に増加する子どものがん細胞は、抗がん剤に対して極めて感受性が高いのです。小児がんの治療をすると髪の毛が抜け落ちますが、あれは子どもの毛根が急速に増殖している箇所だからです。髪の毛が抜けるのと同様に、増殖する体内のがん細胞も抗がん剤で死滅していると考えると、抗がん剤の効き方が想像できるのではないでしょうか。

10年に1つか2つ登場する画期的な抗がん剤が、子どものがん治療の成績を大きく向上させています。近年、分子標的薬の誕生により、子どものがん治療法に新しい選択肢ができました。新しい分子標的薬と従来の抗がん剤を組み合わせて治療することで救われた小児がんの患者さんも多くいらっしゃいます。

 
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Last Updated: 2018/8/03L.JP.OH.09.2014.0841