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お子さんが、がんになったら

闘病中の不安を、遊びをとおして解決する試み

Q:

チャイルドライフスペシャリストとはどんな仕事をする人ですか?

チャイルドライフスペシャリストとは「遊びの先生」。闘病中の子どもと遊び、子どもたちの精神的な柱となり、入院生活を豊かにしてくれます。チャイルドライフスペシャリストのいる病院はごく限られていますが、こうしたスペシャリストがいなくても、子どもの闘病に遊びの要素を入れることを心がけましょう。

楠木重範先生

答えてくださる方

楠木 重範 先生
大阪医療センター
小児科医師

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遊びの先生

「チャイルドライフスペシャリスト」とは一般の方には耳慣れない職種かもしれません。子どもの闘病を心の面から支える専門家です。子どもの病気を十分に理解したうえで、子どもと良好な関係を築き、その中で子どもの心の状態を把握して不安を解決したり、検査や治療に関してわかりやすく説明を行います。魔法使いではないので、パッと来てパッと解決してくれるわけではありません。時間をかけて子どもたちと人間関係をつくり、子どもが感じている緊張や不安を和らげ、治療に立ち向かう心の準備をお手伝いします。医療者と子どもやご家族との架け橋的な役割を果たしているといえます。

これらはこどもの生活の中心である、「遊び」を通して行われます。私はチャイルドライフスペシャリストを子どもたちに「遊びの先生」と紹介しています。

絶対に嫌なこと、痛いことをしない安心できる人

チャイルドライフスペシャリストがいてくれると、医師も看護師も、そしてお父さん、お母さんも、とても楽になります。チャイルドライフスペシャリストは医療スタッフの一員ですが、医療行為には一切関わりません。子どもから見るとチャイルドライフスペシャリストは、「絶対に嫌なこと、痛いことをしない安心できる人」になります。

例えば、がんの子どものCT検査する場合、子どもは、まず嫌がります。そして泣き出します。こうなると泣き止むまで撮影ができません。医師も看護師も忙しいですからイライラしてしまう。それが子どもにも伝わり、ますます泣き出してしまう。

ところがチャイルドライフスペシャリストがいると、事前に、普段の遊びのなかでCT検査の説明をしてくれます。ぬいぐるみを寝かせてCT検査をしている様子をカメラで撮影し、それを紙芝居に仕立てて子どもに見せる。

「このようにするんだよ」、「どんな検査だったか教えてね」、そうやって語りかけることで子どもはCT検査を受けるのが待ち遠しくなります。撮影の時間にはCT室でニコニコしながら待っていたりします。鎮静剤を用意していた医師は拍子抜けするのです。

「子どもに病名を告げられない」と言う医師やお父さん、お母さんも多いでしょうが、チャイルドライフスペシャリストを見ていると、それが可能であることがわかります。

遊びのなかで成長する子どもたち

子どもが泣いたり、嫌がったりせずにニコニコしていると、お父さん、お母さんのストレスは大幅に軽減されてとても楽になるようです。病室に入っていって子どもたちが笑っていると、「今日、何があるの?」と不思議に思うこともありました。彼らはチャイルドライフスペシャリストが来るのを待っていたのです。闘病中でも、遊びがもたらす笑顔や幸せがあることはとても大事です。子どもたちも情緒が豊かになっていきます。チャイルドライフスペシャリストは子ともと一緒に遊ぶことで、がんの子どもたちの成長・発達も支援してくれるのです。

チャイルドライフスペシャリストは医学知識もありますから、遊びのなかから子どもたちの精神状態を把握し、「あの子は最近こんな遊びが増えてきたから孤独かもしれません」、「遠いところに行くと言っているので不安があるのかもしれません」と主治医に連絡をしてくれます。

チャイルドライフスペシャリスト普及の難しさ

すべての小児科病棟に居てくれると本当に役立ちますが、残念ながら日本ではまだ普及していません。チャイルドライフスペシャリストのいる病院はごく限られています。

日本では資格を取得できないことが大きな理由です。チャイルドライフスペシャリストは米国の資格で、米国の学校で学び、米国の病院で臨床実習しなければなりません。授業も当然英語で行われますから、英語力も要求されます。

医療制度上の問題もあります。米国の小児病院では、チャイルドライフスペシャリストが何人いるかで病院の格が決まるくらい重要な職種です。日本の小児病院では、チャイルドライフスペシャリストを抱えたからといって、診療の保険点数がつくわけではありません。また、医療関係者もチャイルドライフスペシャリストの仕事をよく理解しているとは言いがたい状況なのです。

スペシャリストがいなくても、考え方や実践方法を理解して、子どもの闘病に遊びの要素をとり入れることはとても大事なことです。お父さん、お母さんには、闘病中でも子どもと一緒に遊ぶことを忘れないでほしいと思います。

 
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Last Updated: 2018/8/03L.JP.OH.09.2014.0841