腎臓にできるがんには、成人に発生する腎細胞がんと腎盂(じんう)がん、小児に発生するウィルムス腫瘍がありますが、ほとんどは腎細胞がんです。無症状のうちに発見される患者さんが増えています。早期に発見できれば手術による完治も可能ながんですが、進行すると残念ながら完治が難しいがんになります。しかし、治療法は著しく進歩していますので、悲観することなく主治医と相談しながら治療を進めましょう。ここでは、順天堂大学大学院医学研究科 泌尿器外科学 教授の堀江重郎先生にお話を伺いました。

順天堂大学大学院医学研究科
泌尿器外科学

教授 堀江 重郎 先生

【監修】

堀江重郎先生

ほりえ・しげお先生
1985年東京大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院、武蔵野赤十字病院を経て、米国テキサス大学サウスメディカルセンターに留学。東京都立墨東病院、国立がんセンター(現 国立がん研究センター)中央病院を経て、98年東京大学医学部 講師。 2002年杏林大学医学部 助教授、03年帝京大学医学部 主任教授、12年から現職。日本泌尿器科学会指導医、日本腎臓学会理事・学術委員長。


尿を作り、血圧を調節する

――本日はありがとうございます。腎臓にできるがん、特にほとんどの腎がんを占める腎細胞がんについてお話を伺いたいと思います。まず、最初に伺いたいのですが、腎臓とはどのような臓器なのでしょうか。

図1. 腎臓とその周辺の臓器 

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図1. 腎臓とその周辺の臓器

堀江腎臓は、成人の場合、背骨の両側のちょうど腰の高さのところに左右1対ある臓器です。ソラマメのような形が特徴的な臓器です。大きさは縦が約12cm、横が約6cm、幅は約3cmでだいたい、その人のこぶしより少し大きい程度です。  
腎臓の働きは2つに分けることができます。1つは、血液から水分と老廃物を取り除いて、尿の元になる原尿を作ることです。原尿は尿路を伝わるうちに濃縮されて、体外に排泄されます。もう1つは、血液を作ったり、血圧を調節したり、骨を丈夫にするような、体に働くホルモンを作ることです。 このホルモンを作る機能のことを医学用語で「内分泌機能」と言っています。

――原尿をつくる仕組みを教えてください。

図2. 原尿をつくる仕組み

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図2. 原尿をつくる仕組み

堀江腎臓は体を循環する血液から水分と老廃物を取り除くことが仕事ですので、体中の血液が集まる臓器でもあります。心臓から腎動脈を通って腎臓に入った血液は、糸球体(しきゅうたい)という部分を通過し、この糸球体が水分と老廃物を取り除き、原尿を作ります。原尿は糸球体の外側にある袋であるボーマン嚢(のう)に運ばれ、ボーマン嚢とつながっている尿細管へと流れます。必要な物質や水分は、尿細管を取り囲む細かな血管で再吸収されます。 この糸球体とボーマン嚢をまとめて「腎小体(じんしょうたい)」と呼び、腎小体と尿細管を総称して「ネフロン」と呼んでいます。1つの腎臓の中には約100万個のネフロンが存在し、左右合わせて200万個になります。水分や物質の再吸収を行う糸球体の毛細血管は全長約50kmになるそうです。腎盂(じんう)という通路に集まった尿は膀胱にたまり、脳から排尿の指令が来るまで、膀胱に蓄えられることになります。

――1日に作られる尿の量はどのくらいですか。

堀江実際の尿の排泄量は1日約1.5リットルですが、原尿は約150リットルにもなります。原尿は尿道を経て尿が排泄されるまでに何度も再吸収と分泌を繰り返して100分の1の量に濃縮されます。尿は成分の90%が水分で、残りの10%に尿素、塩分、クレアチニン、尿酸、アンモニア、カリウム、マグネシウムなどが含まれています。言い換えると、腎臓は尿を排泄することによって体内の水分量や塩分量の調節をしているといえます。腎臓のもう1つ重要な働きが血圧を調整することです。糸球体に血液を送る輸入細動脈という動脈の筋肉細胞(平滑筋細胞)からレニンという酵素が分泌されます。レニンが血液中で作り出すアンジオテンシンという活性物質には、血管を収縮させる働きがあり、これによって血圧が上昇します。一方で、腎臓が作り出すカリクレインという酵素やプロスタグランジンという活性物質には血圧を下げる働きもあります。これらの対照的な働きを駆使して、腎臓は血圧を調整します。

――腎臓に血圧を調整する働きがある理由は何でしょうか。

堀江全身の血液が腎臓に回るわけですが、血圧を調整できると、腎臓に流れ込む血液量を一定に保つのに都合がよいためでしょう。レニンやカリクレイン、プロスタグランジンを血液中に放出する働きは内分泌機能と呼ばれています。


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Last Updated: 2015/5/13L.JP.OH.09.2014.0841