検査では腫瘍マーカーと画像を駆使する

――検査はどのように行うのですか。

池田肝細胞がんの検査には大きく分けて、「腫瘍マーカーの測定」と「画像検査」があります。まず腫瘍マーカーについてご説明します。
がんになると、がん細胞が産生する特徴的な物質の量が血液中に増えてきます。採血して、そうした成分の増減を調べることによって、がん細胞の有無や治療効果の追跡に利用できます。このような特徴的な物質を腫瘍マーカーといいます。肝細胞がんの代表的な腫瘍マーカーには、AFP(α-フェトプロテイン)、AFP-L3分画(レンズマメレクチン結合性AFP)、PIVKA-Ⅱ(protein induced by Vitamin K absence or antagonist-Ⅱ:ピブカ・ツー)があります。最近では超音波検査、CT検査※1、MRI検査※2などの画像検査の技術が進歩して小さなサイズの肝細胞がんを検出することができるようになり、腫瘍マーカーの意義は減っていますが、画像検査と補完的に使うことによって診断精度を上げることができます。

――画像検査の重要性が増しているということですね。画像検査にはどのような方法があるのですか。

池田肝炎や肝硬変の患者さんが最も注意しなければならないことは肝細胞がんへの移行ですが、その検出に画像検査が最も強力な武器になりますし、また健康診断や人間ドックで見つかった患者さんの確定診断にも欠かせません。超音波検査、CT検査、MRI検査が代表的な検査方法です。以前は血管造影も行われていましたが、侵襲度※3が高く、ほかの画像検査の解像度が上昇したこともあって現在は検査だけを目的として使われることは減ってきました。

――超音波検査について教えてください。

池田超音波検査が威力を発揮するのは、肝細胞がんの高危険群の患者さんのスクリーニング検査です。低侵襲性で繰り返し行えるというところが利点です。一方で、横隔膜の真下など肝硬変患者さんで死角になる部位があることもわかっており、肝臓全体をカバーできないため見落としの危険性もあります。また、太って皮下脂肪が厚い患者さんでは十分に観察できません。また後述する肝動脈化学塞栓療法やラジオ波焼灼療法などの局所療法が効いているかどうかを判定するには不十分です。
 肝臓内の腫瘍の診断の感度を上げるために造影剤を身体に注入して造影超音波検査を行うこともあります。装置や撮影方法、造影剤が進歩し、肝細胞がんの悪性度の診断、ほかの良性疾患との鑑別での有用性が明らかになり、診断能はCTに匹敵するともいわれています。

――CTと違って放射線被曝がないということですか。

池田その通りです。またCTの造影に使うヨード造影剤にアレルギー反応が出る患者さんの検査には都合がいいです。しかし、一度に複数の病変を見ることができない、やはり肝臓内に死角が出ることなどから、CTに取って代わるまでには至っていませんが、将来は超音波検査の重要性が今以上に高くなる可能性もあります。

――肝細胞がんの検査はやはりCT検査とMRI検査が最も重要ということですか。


図3.肝細胞がんの検査~CTとMRI~

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図3.肝細胞がんの検査 ~CTとMRI~

池田超音波検査の簡便性、低侵襲性を活用してスクリーニング検査を行った後は、CT検査やMRI検査で確定診断する必要があります。CT検査ではヨード造影剤を使ったdynamic CT検査を行い、肝臓内を精査する方法が主流です。治療効果の判定にも大変有用で、肝細胞がん治療にはなくてはならない検査です。MRI検査もやはり造影剤を使用した造影MRI検査を実施します。最近の造影剤は進歩しており、腫瘍の血流動態が把握できるとともに、正常な肝臓組織と肝細胞がんが明瞭に区別できるようになりました。

――CT検査とMRI検査の使い分けはどのように行われるのですか。


池田造影剤を使ったdynamic CT検査も造影MRI検査も感度(病変の検出率)に大きな違いはないようです。MRI検査がやや上回るという見方が有力ですが、臨床現場ではどちらも同じくらい大切です。一般的に、MRI検査は放射線被曝がないというメリットがあります。腎機能が低下していたり、ヨード造影剤にアレルギー反応が出る患者さんではMRI検査を行います。ただし、体内にチタン以外の金属、脳動脈瘤の止血用クリップなどがある場合はMRI検査を行うことはできませんので、体内にそのような金属が留置されている患者さんは医師に教えるようにしてほしいですね。

――PET検査が注目されていますが、肝細胞がんの治療には使うことができますか。


池田PET検査※4は一般的に全身のどこにがんが存在するのかわからないときには役に立つ検査ですが、肝細胞がんについては検出力が高くありません。腫瘍マーカーの値だけが高くて肝細胞がんが肝臓の外に転移したと見られるのに、どこに転移したかわからないというときには、PET検査を追加する価値はあります。

  • ※1
  • CT検査:X線を使って身体の断面を撮影する検査。身体の内部の構造が詳しく分かるので、病気の診断や進行具合を詳しく調べるときに行う
  • ※2
  • MRI検査:強い磁石と電波を使って身体の断面像を描写する検査。身体の内部の構造が詳しく分かるので、病気の診断や進行具合を詳しく調べるときに行う
  • ※3
  • 侵襲度:外科手術、医療行為や薬剤の投与によって身体になんらかの負担をもたらす度合い
  • ※4
  • PET検査:がん細胞に集まる物質を体内に注入し、がんが存在している可能性のあるところを検出する検査

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Last Updated: 2014/10/09L.JP.GE.09.2014.0061